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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)11609号 判決 1966年6月15日

原告 林東雲

被告 ペンギン交通株式会社

主文

被告が、昭和四〇年六月三〇日、資本の額金一二、〇〇〇、〇〇〇円を金一、二〇〇、〇〇〇円とした資本の減少を無効とする。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、その請求原因として次のとおり述べた。

「一、被告は、昭和三五年九月七日設立の一般乗用旅客自動車運送業を目的とする株式会社である。

二、原告は、本訴提起の日である昭和四〇年一二月三一日から現在にいたるまで、被告の株主である。

三、被告は、昭和四〇年五月一六日、定時株主総会を開催し、「資本の額金一二、〇〇〇、〇〇〇円を金一、二〇〇、〇〇〇円に減少する。その方法は発行済株式総数二四、〇〇〇株を併合して二、四〇〇株とする。」旨の決議をし、被告は右決議にもとずき、債権者保護手続および株式併合の手続を昭和四〇年六月三〇日に終了した。

四、しかし、右資本減少の決議を行なつた定時株主総会の招集の通知は昭和四〇年五月六日に発せられており、会期との間に二週間の期間が存しない。

五、よつて、右のような招集手続に瑕疵のある株主総会において決議が行なわれた資本の減少は無効である。」

被告は、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、原告の請求原因はいずれも認めると述べた。

立証<省略>

理由

原告主張の事実は、いずれも被告が自白するところである。ところで右事実によれば、原告が本訴において資本減少無効の原因として主張するのは、右資本減少の決議をした株主総会の招集手続における瑕疵であるが、右株主総会は昭和四〇年五月一六日に開催されたのに対し、本訴の提起は、それから三ケ月以上を経過した昭和四〇年一二月三一日であることは当裁判所に明らかである。

このような場合に、はたして、株主総会決議取消の訴の提起期間経過後、資本減少無効の、訴を提起しうるかについては異論のあるところであるが、資本減少無効の訴の提起に関しては、たとえその無効原因として主張されるものが、その決議をした株主総会の手続上の瑕疵であつたとしても、資本減少の効力発生後六ケ月以内になされればよいものと解する。けだし、商法第三八〇条第一項は、単に六ケ月以内に資本減少無効の訴を提起できるものとのみ規定していて、特に無効原因として株主総会決議の取消原因が主張される場合を除外する法律上の根拠がないのみならず、資本の減少は、会社に留保すべき資産の額を低下せしめ、その結果として、企業規模の縮少をきたすおそれのあるものであつて、他に影響するところが大きく、特に慎重に取り扱わなければならないことにかんがみ、商法は、資本減少手続の瑕疵を追及しうる場合を拡張したものとみることができるからである。

してみれば、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 元木伸)

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